読んだ本をすぐ忘れないために書くブログ

本当にすぐ忘れます、なんでだろう

“There's Something About Darcy” by Gabrielle Malcolm (ガブリエル・マルコム)

まさにミスター・ダーシーファンの必読書といえるような、ダーシーについての本が発売されるときいて、発売されるや否やBook Depositoryからお取り寄せしました。

There's Something About Darcy: The curious appeal of Jane Austen's bewitching hero

There's Something About Darcy: The curious appeal of Jane Austen's bewitching hero

 

補足しますと、ミスター・ダーシーはジェイン・オースティンの小説『高慢と偏見』(Pride and Prejudice)に登場するヒーロー格のキャラクターで、正式にはフィッツウィリアム・ダーシー(Fitzwilliam Darcy)という名前です。裕福な家庭の生まれで収入にも恵まれ、容姿端麗ながら性格は気難しく、プライドの高さもあり誤解されやすい性格の人物です。この性格が災いして物語の糸を絡めていくことになります。

 

英国では1995年のBBC制作の『高慢と偏見』のドラマが社会現象となり、放送時間中は街から人がいなくなったとも言われています。若き頃のコリン・ファースがダーシーを演じました。

 

 

ダーシーは特別な「何か」を持っている

高慢と偏見』の出版から約200年が経った今でも人気の色あせないダーシー。多くのファンフィクションが今もなお、生み出され続け、世界中の読者の心を掴んで離さないのはなぜ?タイトルの通り、ダーシーは何か特別なものを持っている?それが本書のテーマです。

 

The foundation of the book ‘There’s Something About Darcy’ was the popularity of the ‘I <3 Darcy’ merchandising at the Jane Austen Centre. When I witnessed the enthusiasm with which tourists and fans snapped up the bags and badges, visible around the city, I knew that here was a topic and a history worth investigating. Follow the story with me, for some surprising twists and turns, and some unexpected companions along the way.
I want us to share in what makes Darcy so exciting and enchanting, and discover how the story of the character can bring us closer to the imagination and creativity of our beloved Jane Austen.

(引用元:Coming Soon: There's Something About Darcy)

本書を執筆するきっかけになったのはジェイン・オースティン・センターで見た「I♥DARCY」のトートバックや缶バッチなどのグッズ。研究すべき価値のある文化であり、歴史だとマルコム氏は述べています。

 

ちなみに、ジェイン・オースティン・センターのギフトショップにはバーチャルで入れるようになってるんですが(Googleストリートビューみたいな感じ)、店内にまさに「I♥DARCY」の商品が陳列してあったので是非入ってみてくださいね。↓

https://my.matterport.com/show/?m=jveGJyATRQA

 

ダーシーの文学的DNA

ダーシーのヒーローとしての魅力を探る中で、同時代もしくはそれ以降に登場したイギリス文学のヒーローたちを登場させ、ダーシーから遺伝されてゆくヒーロー的要素を探ります。『嵐が丘』のヒースクリフや、『ジェイン・エア』のロチェスター、ドラキュラやスカーレット・ピンパーネルなどなど。

(ブロンテはオースティンの作品を好んでなかった史実が残っているので、直接的に影響を受けている可能性は低いと思いますが、なかなか興味深い考察です)

 

中にはジョージエット・ヘイヤーの名前もありました。ヘイヤーはオースティンよりかなり後の時代、20世紀の作家で、オースティンに大きく影響された作家でもありました。ヘイヤーはダーシーのみならずオーステインのDNAを受け継いだような感じですよね。(摂政時代のロマンス小説を再現しています)

 

 

ファンフィクションの中で変容していくダーシー像

本書後半では、実際のファインフィクションや映像化された作品を元にダーシー像を追求していきます。物語の続編を語るものもあれば、時代やシチュエーションを変えてストーリーを辿るものもあります。

例えば、ヴァンパイアになったダーシーや大統領になったダーシー、医者になったダーシー、ゲイのダーシー…。例えば、ゾンビと戦うダーシーは2017年に映画化された『高慢と偏見とゾンビ』で有名です。例もたくさんあげ、簡単なあらすじや分析も含まれていますので、ファンフィクション等をこれから探っていきたいという人にはちょうどいいかもしれません。

(ここで協調しておきたいのはダーシーって決して主人公ではないんですよね。主人公はエリザベス・ベネットなんですが、彼女のファンフィクションより圧倒的にダーシーのほうが多い!)

 

 

まとめ

この本はガチガチの文学批評ではなく、ファン視点の熱烈な分析という感じですので堅苦しくなく気軽に読めると思います。しかし、明確な結論や学術的な見解を求める人には物足りないかもしれません。

何かを結論付けるための考察ではなく、様々な角度から、または様々な作品を通してタイトルの通りsomethingの可能性を追求しています。

とにかくダーシーが好き!高慢と偏見が好き!オースティンのファンフィクションや映画化作品が好き!そんな人はただ読むだけでいろんな考え方や文化を吸収できると思います。

 

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 ↑刊行時に行われたブログ・ツアーもぜひご参照ください!